「男の作法」
- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: ごま書房
- 発売日: 1997/05
- メディア: 単行本
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どなたがブログで書いていましたが、氏の語り口はともすると高飛車な内容ながら決していやみのない、そして説得力のあるものです。よくよく考えてみると「ん?」という内容もあります。
すきやきは、はじめは何も入れない、肉だけ。割下が煮立ってなくなったら、また注ぎ足して、ほとんど肉を動かさないように自分で取って裏返すくらいにしてパッと食べれば、割下も濁らないわけです。そして肉だって本当にうまいわけ。そのうちにだんだん肉のエキスが鍋に混じってくる。また注ぎ足して、具合がよくなってきたら野菜を入れるんだけども、ぼくは野菜はネギだけです。<「男の作法」池波正太郎から引用
こう書かれると、ふーん、そうか、今度やってみよう、と思ってしまうわけですが、割下って濁っちゃいけないのかな、とか肉のエキスが混じると濁るんじゃないかな、そもそもすき焼きってしゃぶしゃぶと共に最も肉の味をそのまま味わえない料理ではないのかな、と思ったり。また、身分不相応な高価な時計を否定しながら、高価な万年筆を持つことを賞賛したりしているところも、その時は「なぁるほどぉ」と思いながらも後で「ん?」だったりします。
それでもこの本が魅力的に読めるのは、氏の美学が彼なりに揺ぎないものになっているからだと思います。結局のところ「男の作法」とは常識の範囲内で自分の価値観を持ち、それに従って行動しろ、ということなのでしょう。それこそが男の作法であり男の美学なのだと思います。
ところで高価な時計と高価な万年筆ですが、、、小生は、ある程度の年齢になったらある程度のものを所持することを支持します。どこかで読んだのですが、「時計は自分が背伸びをしてやっと買えるものを現金で買うべき。そうすれば良い時を刻む。ローンで不相応のものを買うと、苦しい時を刻む。」そうです。なんだか歌丸師匠の笑点での回答みたいですが、これは本当だと思います。やはりやっとの思いで買った時計は愛着がありますし、飽きない。どこでしていても恥ずかしくないし、気持ちも上向きになります。特に欧州ではホテルでもどこで時計と靴で値踏みされると言われます、、、それによってあてがわれる部屋の質も変わってくるとか。万年筆もそうでしょう。ちなみに過日入手したMontblancはやはりすこぶる良い。うむ。(自腹で買ったんじゃないけどね。)
というわけで、男も40歳を過ぎたら自分なりの行動規範を持つべき、、、なのです。
ここまで書いて、なぜか思い出したのが小生よりひとつ上のK山氏という愛すべき先輩。どんな職種でどんな肩書きになっても同じ発言ができる(もしくはしてしまう)人です。彼の発言のポイントは常に鋭く、多くの場合正しく的を得たもので誰にも否定できないのですが、常に自分の行動規範に則って行動するという意味ではこれも一種のダンディズムなのかもしれません。(そうなのかな?)