嫌われ松子の一生 ☆☆☆★

大学生活の初めの3年間に住んでいたのは、吉祥寺の4畳半の風呂なしアパートでした。富士荘というとても古典的なアパートの名前でした。23年前とは言え、当時は風呂付のワンルームマンションっぽいアパートが増えてきた時代ですから、そういったアパートはすでに珍しい存在でした。駅から比較的に近かったので、酔って帰れなくなった友人とかが結構泊まりに来てました。最高15人くらい(だったと思う)が同時に泊まったことがあります。Y田氏は半畳の土間の玄関で寝ていたような気がします。

この映画、そんなアパートから話が始まります。(昔は?)どの街にも必ず1人はいた、浮浪者のようなちょっと気が違ってしまったようなおばさんの人生の話。このおばさんが遺体で発見されたところから話は始まるんですが、この人がどうやって道を踏み外して落ちていったのか、、、その人の人生をその人の甥っ子がたどることで話は展開していきます。こう書くととても悲惨な話に聞こえますが、、、描写はいたって軽妙、コメディ仕立てで、ジメジメした感じはまったくありません。
この映画を撮った監督というのは、あのマトリックス仕立ての卓球のビールのCMを創った人だそうですが、確かに普通の映画と違う感じがします。色合いが油絵風というか、、、CGをかなり使ってるようで新鮮、ポップアートみたいな画作りです。映画の進行上の手法としてはフォレストガンプのように時折世間の出来事に触れることで時間の経過を描写する方法を取っていて、割と同時代を生きてきた小生にとってはなかなか入り込みやすい。(まあ、10年くらいずれてますが)それから、ミュージカルの手法を用いているのはNicole Kidmanが出ていた「ムーラン・ルージュ」にかなり近い感じ、、、結構成功してると思います。楽しい。
まあ、そういう分析しててもつまらないので、、、テーマは、愛、ってところでしょうか。人間の価値はしたことより人にしてあげたことで決まる。。。うーん、いいじゃないですか。不覚にも涙が。。。お勧めです。思ったよりぜんぜんいい映画でした。星3つ半☆☆☆★。4つでもいいくらいかな。

4畳半の大学生活の後、会社での寮生活を経て広島に住んでいたことがあります。(この時の住処はもちろん風呂付)当時、広島に「広島太郎」と呼ばれた人がいました、、、髪の毛と髭は伸び放題、ぼろぼろの服を着て、リヤカーを引きながら街を歩いていたあの人。。。別に人に危害を加えるわけでもなく、ただ街を歩いてました。噂ではもともとは広島大学卒のインテリだったそうで、どんな経緯でああなってしまったのかわかりませんが、あの人にもいろんな経緯があったことでしょう。あの人は今どうしているのか。。。

<追記>気になったので広島太郎さんに関して調べてみました。以下、http://www003.upp.so-net.ne.jp/live/hirosima.htmから引用。
1 広島太郎は裕福な旧家に生まれた。
2 彼は広島大学を出たエリートで、サラリーマンになった。
3 婚約した。
4 しかし東大を卒業した超エリートに婚約者を奪われた。
5 ガッカリした。
6 挫折。堕ちるまで堕ちようと決心して競輪ファンになった。
7 堕ちた。
8 でも、家に帰ると普通の人に戻る。お金にも困っていない。
9 今も婚約者が忘れられず独身でいる。
なんか、松子と似た人生みたいだ。。。